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カテゴリー ダメダメ家庭と学校
配信日 04年12月15日
タイトル いつも同じ服
フランソワ・トリュフォー監督の76年の作品に「思春期」という映画があります。原題は「L’Argent de poche」で、直訳すると「ポケットの中のお金」なので「お小遣い」ってとこかな?
思春期に差し掛かる年齢の子供たちの様子を、オムニバス的に描いている映画です。

学校生活を楽しんでいる子供たちの様子が中心ですが、実際のダメダメ家庭出身のトリュフォー監督だけあって、親から虐待されている子供も出てきます。結構シビアーな映画でもあるわけ。
その虐待されている子供は、いつも同じ服を着ている。
青と白のストライプのシャツみたいなもの。
別の映画で、シャーロット・ゲインズブールが着ていたようなシャツともいえるかも。
そして、そのシャツもちょっと汚れている。

その他にも、その子供は、落ち着かない目線とか、おどおどした様子とか・・・いかにもダメダメ家庭の子供であることがスグにわかるわけです。
・・・そうなんですが、やっぱり学校ではその子供の問題などには全く気がつかない。
健康診断の際に、虐待の痕が見つかって、やっと発見されるんですね。

確かに、学校の教員のレヴェルでは、子供の目線の動かし方とか、ちょっとした落ち着かない様子などで、その子供の問題を早期にチェックすることは難しいでしょう。そんな洞察力がある人は、教員などはやっていませんよ。
しかし、一般レヴェルの洞察力があれば、着ている服が毎日一緒ということくらいはわかりますよね?
大体において、社会人だったら、1週間続けて同じ服は着ないでしょ?子供だってちょっとは考えますよ。

ダメダメ家庭では親は子供のことには無頓着。だから子供がいつも同じ服を着ていることも何とも思わないわけ。
それにダメダメな親は子供に「いい服を着せてあげよう!」などとは考えないので、子供も持っている服がそもそも少なくなってしまう。
だからどうしても毎日同じ服になっちゃうんですね。となると当然のこととして服も汚れたまま。

このようなときは、学校は往々にして子供の側を責めたりするわけ。
「どうして清潔な服を着て来ないんだ?!」
そんな感じにね。
そうなると、その子供はますます学校で居場所がなくなっちゃうわけですね。

以前ちょっと書きましたが、「ちょっとヘンだな?!」と思うと色々と見えてくるものですが、鈍い人はそんなことは感じずに、ただひたすら「ケシカラン!」と説教するだけ。
だからこの手の問題が、潜在化して、行くところまで行っちゃうわけです。

毎日同じ服だったら、「何か問題があるのかしら?」って、ちょっと考えるくらいの感性を喪失してしまっていたら、教員というより人間として失格でしょ?

「あら?!あの子は昨日と同じ服だわ!これから、ちょっと注意して見てみましょう!」って、それほど難しいことではありませんよね?
そんなチェックは大人同士だってやるんだから・・・

しかし、現実の教員は、そんな感性を喪失した人ばかりなんですね。
子供の事件が起こってしまった後で、「兆候がなかったのか?」「もっと前からわからなかったのか?」と議論になったりしますよね?

子供の服がいつも同じという状態を、その兆候としてみることができれば、「兆候はあった。」と言えるでしょう。
しかし、「私は親から虐待されています。」と、直接的に言わないと気づくことができない教員にしてみれば、「兆候はなかった。」と言えるわけ。

汚れた服は、問題があると言えても、1週間同じ服というのは問題があるとは言えない。
そんな鈍感な教員だったら、その時の事件だけでなく、別の事件でも対応できませんよね?
そんな教員は、以前には「そんな汚れている服を着てくるなんてケシカラン!」と子供に対して怒鳴り散らしているだけ。
子供だって、そんな問答無用の教員に相談なんて出来ませんよ。
ただでさえ、親から問答無用の説教を聞かされ続けているわけですからね。
逆に言うと、子供から直接的な困りごとを言わせないようにすれば、教員としては、知らなかったのだから、まったく「ワタシは悪くはない」ということになる。だからこそ、兆候を見ないようにして、困りごとを言わせないようにする。

事件が行くところまで行ってしまうような学校だったり、地域というものは、その程度の水準の学校と言えるわけです。それだけ、問答無用の状態だったり、鈍感な状態なんですね。学力レヴェルの問題というよりも、会話のレヴェルなり、問題意識のレヴェルが低いわけ。

しかし、鈍感さというものは、制度上は罪とは言えない。
問題が起こってから、「どっちが悪い?」と議論するのは、勝手ですが、そのような事件を未然に防ぐ方法というものは、制度の問題とは言えないわけです。
「鋭敏な感性を持て!」「日頃から問題意識を持て!」と、法律で規定しようがないでしょ?
何より結果そのものが、その人物のレヴェルを雄弁に物語っているわけです。

(終了)
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発信後記

このメールマガジン「ダメダメ家庭の目次録」も、もうすぐ発行200回となります。といっても、2重配信などのチョンボをやったりしているので、それぞれの発行マガジン元によって発行回数が違っていたりしますので、200回記念号などは考えていません。

多分、この手の家庭問題に関する文章は誰でも書けると思います。5本ぐらいなら簡単なのでは?しかし、10本となると書ける人はかなり限られてくると思います。20本となると書ける人はケタ違いに少なくなるはず。

もうすぐ200回ということで、「これは人類史上の奇跡だ!」と勝手に自画自賛しているところ。勿論、こんな文章を「書けない」方が幸せなのは言うまでもないことですが・・・

次回は、総集編の「作品の中に描かれたダメダメ家庭」ということで、とある連作映画を取り上げます。色々とつながっているわけ。
R.10/11/17