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カテゴリー 映像作品に描かれたダメダメ家庭
配信日 05年2月4日
タイトル 秋のソナタ (77年作品)
監督 イングマル・ベルイマン
ダメダメ家庭を描いた映画ということで、「秋のソナタ」という作品を取り上げるというと、皆様は、どう思われるでしょうか?
「えっ?あの韓国ドラマって、そんな家族モノの話だったの?」
うっかりモノ?の購読者さんの中には、驚かれる人もいらっしゃるかも?

しかし、「秋のソナタ」ですよ。「冬のソナタ」じゃあ、ありませんよ。

スウェーデンの映画監督のイングマル・ベルイマンの77年の作品です。主演の一人は、あの有名なイングリット・バーグマン。

ちなみに、イングマル・ベルイマン監督自身もダメダメ家庭出身の人です。彼の映画は家庭問題を扱った作品が多くあります。
そして、イングリット・バーグマンの娘の役をやっているのが、当時のベルイマン監督の妻であったリヴ・ウルマン。彼女もダメダメ家庭出身者。
まさにこの「秋のソナタ」は、ダメダメ家庭をその空気感まで知り尽くした人たちによる映画と言えるわけ。

映画の冒頭で、リヴ・ウルマン演じる娘が書いたとされる小説の中の言葉が語られます。
「私は日々、生きるすべを練習している。
問題は自分が何者かわからないことだ。
答は見えない。
誰かが、ありのままの私を愛してくれるのなら判るかも・・・
でも、今の私にはそんな希望はない。」

いやぁ〜、苦笑いしてしまうほどダメダメ家庭的ですよね?
実際に、この「秋のソナタ」を見た女優オードリー・ヘップバーンは、自分と母親の関係を思い出して、いたたまれなくなったそう。
そう!この「秋のソナタ」という映画は、ダメダメ家庭における母親と娘の絶望的な葛藤を「これでもか!」と言うくらいに描いている作品なんですね。

では、そのダメダメ家庭での母と娘の葛藤の具体的シーンを「これでもか!」と、取り上げて見ましょう。

1. 音信不通・・・さすがにダメダメ家庭の親子は音信不通になる。まあ、会って楽しいわけではないし。ということで、その母娘はどうやら7年間も音信不通だったよう。

2. 自分中心・・・娘が音信不通の母親を自宅に招待したら、何故か本当にやってきてしまう。その母親は、娘に会った早々自分の話ばかりで、「元気だった?」とか娘のことを聞いたりはしない。ひたすら自分中心なんですね。

3. おどおどとした子供・・・久しぶりに母親に会った娘は、どうもおどおどとした表情。母親と会ってさわやかな表情とは行かないのがダメダメ家庭。

4. 心にもない言葉・・・リヴ・ウルマン演じる娘には妹がいる。母親にしてみれば次女に当たる人。その次女は病気で寝込んでいる。その次女を母親はキライ。しかし、次女と会って見事な愛想笑いを展開する母親。大嫌いなことは判りきっているのに、目の前で愛想笑いを見せられてどうすればいいの?

5. 母親の困った表情に喜ぶ娘・・・キライな次女に会いながら必死の愛想笑いをして、困っている母親の姿を見て、ホクホクしている娘。まあ、「ザマーみろ!」と言ったところかな?まあ、しょうがないけど・・・

6. 「傷ついた」という言葉・・・ダメダメ家庭は被害者意識が強い。この母親も「怒った。」とか「悲しい。」とかの言葉を使わずに「傷ついた。」という言葉をよく使うわけ。そうやって被害者としての立ち居地を強調するわけです。

7. 外面はいい・・・家族とは会話が弾まなくても、外部の人とは話が弾んだりする。そんなタイプのダメダメ家庭も多くあります。往々にしてダメダメ家庭は外面はいいんですね。しかし、家庭内でいつもぶっきらぼうな表情の母親が、赤の他人と生き生きとしゃべっていると、子供としては途方に暮れますよね?

8. 表現の押し付け・・・この母と娘が一緒にピアノでショパンを弾く。母親はプロのコンサートピアニストという設定です。全くのアマチュアの娘の演奏を呆れた表情で眺めたりする。ダメダメな親は子供の表現を「何?これ〜笑っちゃうわ!」と、一笑にふしてしまうことは年中行事。これでは、子供は自己表現にも臆病になりますよね?

9. 服が野暮ったい・・・自己表現が抑えられてしまったので、娘の方は服装が野暮ったい。それにダメダメ家庭の母親は、娘が女性としての幸福を勝ち取ることを妨害する傾向があります。だから野暮ったい服を着せたがるわけ。

10. 愛し方を知らない・・・ダメダメ家庭の人間は、愛情を知らない。親から愛情を受けたわけではないのでピンと来ないわけ。そして愛情のないまま結婚する。そして子供を持って「子供を持って愛というものを知ったわ!」と思ったりする。しかし、そんな言葉は、それ以前に、愛情を無縁だったことの証明なんですね。

11. 子供の好みを知らない・・・ダメダメ家庭では、親と子供は会話があるわけではない。おまけに会話があったとしても親の方からの誘導尋問の様相が強いわけ。だから子供は気軽に自分のことをしゃべることができない。だから当然のこととして、親が子供の好みを知らないという事態になるわけ。

12. 幸福断定・・・母親は娘に対し「アンタはあの時は、幸せだったでしょ!」と断定したりする。相手を一方的に幸福断定してから、グチを語りだす・・・ダメダメ家庭でのやり取りの王道ですね。

13. 写真を持ち歩かない・・・母親は娘の写真を持ち歩かない。あくまで自分中心。ある意味において前向きな人。

14. 生返事・・・ダメダメ家庭では、親は子供と会話する気がない。だから子供が何を言い出しても生返事。

15. 容姿をけなす・・・ダメダメな親は子供の気持ちなど頓着しない。だから娘に対して「あ〜あ、あなたは男の子のような姿ねぇ・・・」などと平気で言ったりするわけ。

16. 気まぐれに構う・・・ダメダメな親は普段は、自分のことで頭がいっぱい。しかし、「ちょっと気分転換をしよう!」と、突然に子供にちょっかいを出したりする。しかし、普段は、子供とは何も会話がないので、子供のことは何も知らない。大騒ぎした挙句、いつの間にか普段どおりの自分の世界に・・・子供にとっては悪夢の時間ですよね?

17. 自傷・・・母親とのことを思い出すと「爪を噛み、髪を引き抜いた」という娘。ダメダメ家庭出身者が自傷行為に走ってしまうことが多いのは、言うまでもありません。

18. 愛情の強制・・・ダメダメな親は会話の意欲も能力もないので、子供も懐かない。だから強制的に子供から愛情を得ようとするわけ。まあ、プロのピアニストの母親もその点は同じなんですね。

19. 表現への志向・・・ダメダメ家庭ではありのままの自分を認めてもらえない。だから小説を書いたり、音楽を演奏したりで自己表現をするしかないわけ。ダメダメ家庭の人間はそのような表現への希求が強いわけです。

20. 子供への期待・・・このダメダメな母親は、やっぱり子供時代にダメダメ家庭で育ったと自覚しています。そして子供を持つことで「愛を知りたかった」とのこと。子供からの慰めを過剰に期待するのもダメダメ家庭の典型。

21. ダメダメの連鎖・・・この母娘はよく似ています。やたら両方ともやたら「傷ついた」と言ったり、「表現へ強い拘り」を持ったり・・・娘がいう。
「母の失望を償うのは娘なの?」「母の不幸は娘の不幸になる。」「娘の不幸は母の喜びなの?」
まさにダメダメが見事に連鎖しているわけ。

22. ダメダメ家庭出身者同士の結婚・・・映画とは直接関係ありませんが、ダメダメ家庭出身者同士の結婚は実にポピュラーです。そして「入れ込み」「入れ込まれ」泥沼に・・・
まあ、ベルイマンとウルマンは芸術家同士なのだから、たとえ実生活でドメスティック・ヴァイオレンスのような事態になっても、こうやって後世に残る芸術作品が出来たのだからいいのですが、一般的には、そうは簡単ではありませんよね?

と、このメールマガジンをご購読されておられる方のうちで、母と娘の葛藤を体験された方には、ドンピシャ!な作品だと思います。というより、いたたまれなくなるでしょうが・・・
まあ、折角、身を切られるように切実に描かれているわけですから、参考になることがいっぱいあるでしょうね。

(終了)
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発信後記

ここで、イングリット・バーグマン演じる母親は映画においてスウェーデンの家庭を捨てて、イタリア人の男性の元に走った芸術家という設定です。
実際のイングリット・バーグマンもスウェーデンの家庭を捨てて、イタリア人の映画監督ロベルト・ロッセリーニの元に走ってしまい、大スキャンダルになってハリウッドから追放されました。

ダメダメ家庭の芸術家は、実生活と創作活動が混然となっている場合が多くあります。
ここでのベルイマン監督も、以前取り上げたフランスのトリュフォー監督も、アメリカのウディ・アレン監督も、実生活の問題や会話がそのまま映画で出てきます。

自分にとって、一番重要で切実な問題を作品にするわけ。ある意味において誠実なことですね。

ちなみに来週の金曜日も「作品に描かれたダメダメ家庭」のカテゴリーです。
今までは映画作品ばかりを取り上げてきましたが、次回は別のジャンルです。
作品のタイトルは皆様ご存知のもの。実際にご覧になられた方は多くはないでしょうが。
いつものように「妙に説得力のある」文章になる予定です。
R.10/11/17