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カテゴリー 事例から考えるダメダメの問題
配信日 05年3月9日
タイトル ダメダメ家庭としてのソニー
先日(05年)、ソニーの出井会長が辞意を表しました。まあ、ソニーの株価は最盛期の4分の1の値段なんだから、辞任も当然でしょう。
その辞意表明を受けて、ソニーの株価が上がりましたね。

辞任表明をしたら株価が上がるなんて、出井さんも、ちょっとやりきれないでしょうが、まあ、それが出井さんに対する周囲からの正直な評価と言うことなんでしょう。

実は私はソニーという会社に、大変に注目していました。
ダメダメ家庭の要素がテンコ盛なんですね。
本来なら、このソニーの没落の問題を、本などでもっと調査した上で、文章にまとめてみたいと思っていたわけです。しかし時期もちょうどいいので、ソニーの没落を導くことになった、ソニーのダメダメ家庭的な要素をピックアップしてみましょう。

1. 問題を認識しない・・・辞任表明した出井会長は「業績の低迷は、経営が悪かったのではない。時期が悪かっただけだ!」と、おっしゃっています。ただ、同じ時期に業績を伸ばしている会社もあるわけですしね。時期の問題だけでは説明できないでしょ?

しかし、ダメダメ家庭では、自分自身の問題を認識せず、「時期が悪い。」とか「政治が悪い。」とか、他に原因を求めてしまうんですね。だから被害者の立場に自分を置いてしまって、改善策を取らないわけ。

2. 外面がいい・・・ダメダメ家庭は往々にして、外面がいいわけ。外からは「かっこうがよく」見えたりするわけです。ソニーでも、新たな経営のスタイルなどを標榜して、何とか委員会を作ったり、執行役員制度を作ったり、社員採用にあたっての学歴不問など、一見先進的な「経営」をやっています。

しかし、いいものを作るためには、経営をかっこうよくすることよりも、顧客の意向を聞いたり、現場の営業や技術者の意向を聞いたり、部品供給会社からの情報を聞いたり・・・と、ドロ臭いことをコツコツやることが第一なんですね。そのようなドロ臭い会話の積み重ねこそが、「いい製品」につながるわけでしょ?会話の不全では、いいものはできませんよ。

3. 人の気持ちがわからない・・・ソニーでは「選択と集中」と言うことで、不採算部門は大胆に廃止して、採算性の高い部門に特化した経営を標榜しています。これは株式会社ならある意味当然のこと。しかし、不採算部門の廃止など、本来は誉められたことではないでしょ?しかし、このような「不採算部門の大胆な廃止」と言うと、経営者としては外面がいいわけ。

しかし、ちょっと考えればわかることですが、「この会社は、この分野の製品は、そのうちに生産中止にするんだろうなぁ。」と顧客が思ったら、そんな会社の製品なんて買わないでしょ?顧客が買わないだけではありません。開発をする技術者だって、ヤル気が起きないでしょ?「どうせ、開発しても、スグに製造中止さっ!」そんな風に思って技術開発をしていたら、「いいもの」は、できませんよね?ちょっと人間の気持ちを考えれば、誰だってわかることでしょ?

4. 妙なコスト意識・・・ムダなコストはカットするのが経営者としては当然。しかし、ダメダメ家庭では、外面がよくなることには、お金を掛けたりしますが、本当に重要なことにはお金を使わないんですね。

実は私はソニー製品を使っていたことがあるのですが、その補充部品について電話で問い合わせた際に、大変に困惑したことがあります。

電話サポートでの説明が全然要領を得ないんですね。結局は、ソニーの都内にあるサービスステーションに、その補充部品があるということになって、場所とアクセス方法を聞いたのですが、やっぱり要領を得ない。どうやら、フリーダイヤルで沖縄あたりにつながっていたようです。だから都内での交通アクセスの方法の説明ができないんでしょう。

まあ、「顧客サポートは人件費の安い沖縄でいいや!」というわけなんでしょうね。実際に、アメリカのコンピューター会社で、顧客サポートがインドにつながる会社もあります。しかし、それはインドの高学歴の優秀なスタッフを、アメリカとはケタ違いに安く雇えるからですね。同じ日本の沖縄と東京でそんなに人件費が違うの?それに、雇えるスタッフの質の問題も、当然のこととして、ありますよね?

それに、顧客サポートを遠く離れたところに置いてしまうと、販売した製品の問題がわからないでしょ?本来なら顧客からの要望を受けて、壊れにくい製品に改良していくとか、使いやすい製品にしていくとか、顧客からの意向を、製品の設計に反映させる絶好のチャンスじゃないの?そんな貴重な情報を、外に出してしまってどうするの?
しかし、人件費の節約と言うとかっこうがいいわけ。しかし、そこをカットするのは間違いなんですね。

5. スパイラル・・・そのような顧客からのクレームなり、問い合わせを受け付ける拠点を遠隔地に置いてしまっているので、本社サイドは、ますます問題点を認識しなくなるわけ。そうなると、製品の改良のチャンスも失ってしまうので、ますますクレームが起きるわけ。そうやってクレームが多くなるので、ますます顧客対応の人件費の安さが必要となる。これでは絶対に改良できませんよね?

6. 当事者意識の欠落・・・実は上記の、ソニー製品のサービスステーションで、探していた補充部品を購入しようとしたところ、全然違うものが出てきました。私は「電話サポートに聞いて、ここにくればあるということなので、わざわざ来たのに、全然違うじゃないの?」と言ったところ、『ウチの電話サポートは商品知識がありませんから。』と平然と回答されました。

そして「補充部品の代金で、代わりに新品を送りますから、それでいいでしょ?」と、ふてくされられてしまいました。
そりゃアンタさんのミスではないでしょうがねぇ・・・。
ちゃんとした会社なら、その客の目の前で、電話サポートの上司なり、サポートを統括している責任者に電話するでしょう?そうすれば、顧客だって納得しますよ。ミスは誰にでもありますからね。

しかし、当事者意識がなくなってくると、被害者意識だけになってしまうので、「アイツのせいで、オレに余計な仕事が増えちゃったじゃねーかよ!」と、嘆くだけになってしまうんですね。


今回の6つだけでなく、きっと、もっと多くのダメダメ家庭的な事例があると思いますが、私はもうソニー製品は買わないと決めましたので、とりあえず思い付く6つの事例を取り上げました。

私は別にソニーに恨みがあるわけではありません。ただ呆れているだけです。
それに、その昔はそれなりに「面白いところ」があった会社だったわけですしね。
社員の方も、自分たちの製品に対する愛情がありましたよ。
どうして、こうなってしまったのか?
そして、このようにダメダメになってしまったソニーという会社が、どのように再生するのか?あるいは再生できるのか?ここに注目しているわけです。

ダメダメ家庭の再生ということは非常に難しい。
まずもって、自分の家庭がダメダメであるという自覚が難しいことは、このメールマガジンで何回も書いています。

それにダメダメ家庭という状態は、会話の不全の状態。
改善策をとろうと思っても、その改善の手段は、まずもって会話でしょ?
顧客の話を聞いたり、営業スタッフの話を聞いたり、開発スタッフの話を聞いたり・・・
そしてその相手の人たちに、自分の意向をわかりやすく伝える。

日産のゴーンさんだって、コストカットだけではなく、現場に足を伸ばして積極的に会話していましたよね?
しかし、ソニーでは、その改善の方法である会話が不全なのだから、改善は非常に難しいわけ。

ウェールズ生まれのアメリカ人の新会長さんも、献身的にソニーの再生に取り組まれることでしょう。
私としては、ダメダメ家庭の再生の実験として、大変に注目しているわけです。もし再生に成功したのなら、その手法は他のダメダメ家庭の再生にも利用できるはずですからね。

(終了)
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発信後記

何度も書きますが私は別にソニーに恨みなどありませんよ。
かつては「ちゃんとしていた会社」だったソニーの没落に興味があるだけです。

会社のいい、悪いって、トラブルが起こった時の対応でわかりますよね?
トラブルに丁寧に対応してくれたら、今後もその会社の製品を買おうと思うし、ぞんざいな対応だったら、もう買わないわけ。

「ソニーの出井会長は文系出身だから、技術がわからないからダメなんだ!」とおっしゃる方もおられるようですが、出井さんの前任の大賀さんは音楽科出身で、技術者どころではない人。それにトヨタの今の社長だって文系出身でしょ?要は技術者の話を聞いて、意見をくみ上げることができればいいわけ。話が聞けるか?どうか?が問題なんですね。

多分、出井さんはダメダメ家庭の出身なんだと思います。自分の出身家庭のような『普通』の・・・会話のない・・・妙にコスト意識がある・・・言い訳ばかりの・・・集団にソニーを変えてしまったわけ。これでは没落するのも当然ですよ。
R.10/11/18