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カテゴリー 映像作品に描かれたダメダメ家庭
配信日 04年10月15日
タイトル ベティ・ブルー
監督 ジャン・ジャック・ベネックス
主演 ジャン・ユーグ・アングラード&ベアトリス・ダル
このベティ・ブルーという作品はジャン・ジャック・ベネックス監督の作品です。
「愛と激情の日々」なんて、おどろおどろしいサブタイトルが付いています。
30歳くらいの男性ソルグと、19歳の女性のベティの「激しい」愛の日々を描いた感動のラヴロマンス!と、三文映画ライターが書いている・・・んじゃなかったのかな?しかし、そんなありきたりな感じで映画を見ても面白くない。
と言うか、作品の作り手だって、そんなボンクラご用達のありきたりな作品を、わざわざ作ったりはしませんよ。
と言うことで、このメールマガジンのテーマである「ダメダメ家庭」の見地から見てみたいと思います。

このベティさんですが、19歳の女性という設定です。演じているのはベアトリス・ダル。ちなみにソルグを演じるのはあのジャン・ユーグ・アングラード。ここでも彼ならではの繊細な演技といえます。
さてさて19歳のベティさん、実にダメダメ家庭出身者の典型なんですね。
今回はそんな観点から、この「ベティ・ブルー」という作品を見て見ましょう。

1. 実家と疎遠・・・この「ベティ・ブルー」という映画で、ベティの実家について言及されることはありません。しかし、3時間の映画で、一言も言及がないこと自体が、意味を持つんですね。それこそ、ベティが自殺未遂した後も実家に連絡を取れない。それだけ実家と疎遠だったわけです。

2. 不満たらたら・・・このベティさん、やたら不満を口にする。自分の希望が通らないと暴れたりする。しかし、自分の希望を実現させるために自分自身で何か努力をするような様子もないんですね。

3. 敵味方がはっきり・・・例えば映画の冒頭に出てくるような海辺のバンガローの管理人のオヤジさんがいます。ベティさんはそのオヤジを敵視している。しかし、そのオヤジの言っていることは、まあ、大人の融通としては穏当なもの。

自分自身がソルグのパートナーとしてやっていけると実証すれば、そのオヤジだって全然問題にはしていないんですね。「結果さえ出せば文句はないヨ。」と言ったスタイルなんですからね。しかし、ベティさんはそのオヤジを敵視するわけ。これでは味方も出来ませんよね?

4. 文学青年好き・・・ソルグが若い頃に書いたノートを見つけて感動するベティさん。まあ、ダメダメ家庭出身者は「恋に恋する」傾向が強いことは、このメールマガジンで何回も書いています。だから文学青年好きが多い。しかし、文学青年を好きでも、文学そのものは好きではないんですね。

このベティさんも普段はどんな本を読むのかな?普段は本なんて読みそうにないし、本を読んでいるシーンもない。このソルグが書いたノートだって、大して芸術的な価値はないんじゃないの?ソルグ自身がそのことをわかっている様子。まあ、若い頃の不満を書き綴っただけの文章なんでしょう。それはそれでいいのですが、だからこそ現状に不満を持っているベティの心を捉えたわけでしょうね。

5. 人の気持ちがわからない・・・友人のエディの母親が亡くなったとの報を受け、ソルグや友人が悲しんでいるエディを慰める。しかし、ベティはそんなことをしない。皆が悲しんでいる時に、ちょっとおかしなことに声を上げて笑ってしまう。まあ、ベティさんにとって「母親が死んで悲しい」という人間の気持ちなんてわからないわけですね。このような感覚は、アルベール・カミュの「異邦人」でのムルソーと同じといえるでしょう。

6. 会話が出来ない・・・「愛と激情の日々」というだけあって、このベティさんは激情的で、落ち着いた会話が苦手。ベティと同居しているソルグにしても、他の人とは会話が成立しているのですが、ベティとは会話が成立していない。話をし始めたと思ったら、ケンカになるか、情事に進むかとどっちかになってしまう。会話だけで終わることがないんですね。

7. 自分の弱点を認めない・・・ベティさんは普段から不満たらたら。そして、悪いのは全部他者のせいと思っている。決して自分自身に問題があるとは思っていないわけ。これではトラブルが起こるわけですし、改善も不可能ですよね?

8. コツコツと努力しない・・・このベティさんは不満をブツブツいうのはいいとして、自分自身は全然努力しない。ダメダメ家庭出身者は夢ばかり見て、自分自身で何もしないことが多いのは、よくあるケースですね。

9. 人に入れ込む・・・まあ、彼氏だからというわけではないでしょうが、ベティはソルグに異常に入れ込んでいる状態。「少しはアナタを尊敬させて!」「アナタは本当は大作家でしょ?」などと言ったりする。彼氏が立派であることに拘っている。それはそれでいいのですが、自分以外の人を尊敬するために、その人に対して要求を出すよりも、ベティ自身がちょっとは努力すればいいだけでしょ?

しかし、普段から「自分は本当はこんなモンじゃない!」と不満たらたらなので、「自分の好きになった彼氏はこんなモンじゃない!」と思いたがるんですね。
それに、自分自身ではやりたいことがわからないので、やりたいこと自体や自分の価値を、自分以外の人に依存してしまうわけ。

10. 不満の解決としての子供・・・このベティが妊娠の兆候があり検査する。ベティやソルグは大喜び。しかし、結果は陰性。まあ、それはそれでしょうがない。しかし、ベティは妊娠しなかったショックで、ますます奇行が進行してしまう。
ダメダメ家庭の出身者は、日頃からの不満を、子供を持つことで解決しようとする傾向があることは、前回書いています。子供を持つことで人生のリセットをしようと思っているわけ。しかし、子供に依存したそんな発想は、何よりも子供にとって迷惑な考えですね?

11. 趣味を持たない・・・ベティさんは全く趣味がない。これでは会話のネタすら出来ませんよね?

ここで、アングラード演じるソルグも、ダメダメ家庭の出身者のようです。まあ、出身家庭のマトモ偏差値は45くらいかな?それに対し、ベティの出身家庭は偏差値30くらいの重症のダメダメ家庭のようです。この手の関係はありがちですね。重症と軽症の組み合わせのパターン。

まあ、ソルグの方は、若い頃の不満は不満として少しずつマトモな人間になろうとしているわけ。ショボくてもカタギの職業をコツコツやり、嫁さん貰って子供を作って・・・と、いささかオヤジが入った状態。しかし、これが一般的な人間の姿でしょ?

そのようなことが出来ないベティは、所詮は若い頃のお相手。
徹底的にダメダメ家庭出身者であるベティを切り捨てることも、マトモになるためには必要なことなんですね。

シェークスピアの「ヘンリー5世」に出て来るファルスタッフのようなもの。若い頃のヤンチャのお供など、人間が成長するためには切り捨てなければならないわけ。
今後、家庭を営むにも、創作活動を展開するにも、自己省察が出来ず、会話も出来ず、不満だけを口にする人間などパートナーしては問題外。

まあ、ベネックス監督も、実際にベティのような人と付き合って、その想いや記憶を映画に封印したというわけでしょう。ベティさんのキャラには実際のダメダメ家庭出身者の特徴ありまくりですもの。この「ベティ・ブルー」という作品は、その女性の墓碑銘であると同時に、ベネックス自身の青春の墓碑銘なんでしょうね。

社会への不満はいいとして、何故にそのような問題が起こるのか?自分自身の問題は?そのような社会の問題と人間そのものとの関係・・・そのような根源的な思索まで至らないと、所詮は不満を言うだけで終わっちゃいますよ。まあ、よくある「一発屋」の小説家ってこんな感じじゃないの?現状への不満を新鮮な感性で?で書いたとか・・・

このベティさんは妊娠かと喜んだわけですが、実際には妊娠していませんでした。しかし、もし本当に妊娠してしまったらどうなっちゃうの?彼女は将来はマトモな母親になれるでしょうか?
だって、少なくともソルグは出産後のことも考えて、赤ちゃんの服なども用意しているけど、ベティは出産後のことは何も考えていませんよね?

会話が全く出来ないベティが子供と会話できるの?
子供とどうやって意思疎通していくの?
あるいは、子育ての不満をどうやって解決していくの?
結局は、イライラして子供を殴ったり蹴ったりするようになるのはミエミエですよね?

ということで、「ベティ・ブルー」のベティさんはダメダメ家庭の出身者として典型の姿なのですが、ダメダメ家庭を作る親の姿としても典型的と言えるわけです。

(終了)
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発信後記

埼玉県で集団自殺事件がありましたが・・・
死にたい人は、死なせてあげればいいじゃないの?
困っている人を、そうなるまで放っておいて、やってから騒いでもねぇ・・・

ということで、来週はダメダメ家庭と自殺に関わる文章を配信いたします。
来週の金曜日は集団自殺を扱った映画作品を取り上げます。
多分、一般的なレタルヴィデオショップにもおいてある作品です。

ちなみに、この「ベティ・ブルー」という映画ですが・・・
この映画は確かに「激しい愛」の日々で・・・感動的と言えるのかもしれませんが・・・
逆に言うと、この映画でのベティさんは「激しい愛」しか取り得のない女性と言えるわけです。
映画に感動するのはいいとして、ベティさんが母親になったら、児童虐待必至であることくらいは、予想できますよね?
ご覧になられてない方は、週末にもご覧くださいな。
R.10/11/16