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カテゴリー 事例から考えるダメダメの問題
配信日 05年3月21日
タイトル ダメダメ家庭としての和泉流宗家
一時、テレビのワイドショーで狂言師の和泉元彌さんの問題が取り上げられていたようです。
私はワイドショーなど積極的には見ませんが、チラっと見たりすると、意外にも興味深い事案もあったりします。

私は日本の古典芸能には関心もありませんが、あの和泉元彌さんの問題は、ダメダメ家庭の問題において、古典芸能的なまでに典型的な事案ととらえることができると考えております。

今回は総集編的に、あの和泉流宗家の問題を考えてみましょう。
と言っても、では、和泉元彌さんの問題とは何だったの?
私も詳しいことはわかりませんが、狂言での和泉流の宗家(家元と同じでしょうね)の嫡男である和泉元彌さんが、「能無し」で、おまけに常識を欠いた振る舞いをしたために、周囲のベテランの狂言師から、追放されちゃったような・・・そんな感じだったと思います。

そこに和泉元彌さんのご母堂であらせられる、節子さんが加わって・・・「宗家をなんだと思っているんだ!」と息子をかばってご立腹。
宗家を立てるのが、「オマエたち家来の役割だろうが!」と言うわけなんでしょうね。
狂言師の協会から追放されたことを取り消しにするよう裁判を起こして、先日、和泉親子は敗訴していました。

今回の節子さんと元彌くん親子の事案と、同じような事例が日本の歴史にはあります。
約400年前のこと。
豊臣秀吉の側室の淀君と、子供の秀頼くんの例です。

淀君は秀吉の死後、豊臣恩顧の大名たちに、こんな感じで言ったのでは?
「皆のもの!秀頼公は、太閤殿下のお子であるぞ!心して使えるのじゃ!」
秀頼くんは「そうだぞ!ボクはえらいんだぞ!えっへん!」

大名たちは『ははっ!我ら一同、亡き太閤殿のご恩に報いるため、身命をとして秀頼殿下にお仕えする所存でございます!』
と言いながら、小声で『このぉ、世間知らずのボンボンめがぁ!今に寝首かいたるけんのぉ!』そんな感じだったのでは?

結局は、淀君と秀頼くんがどうなったのか?皆さんご存知ですよね?

血筋というものを、尊重するシチュエーションもあるでしょう。その血筋の威光が通用しているうちに、本当の実力を身につければいいわけ。
血筋の威光だけに頼っていたら、最後には悲劇になってしまうわけです。

では、和泉元彌くんの家庭・・・と言うか節子さんの発想、それに淀君の発想のどんな点がダメダメ家庭的なんでしょうか?
以下に列挙してみましょう。

1. 家柄自慢・・・ダメダメ家庭は会話が不全の家庭です。だから自分自身が会話によって、新たな縁を開拓していくことができないわけ。必然的に地縁なり血縁のような、会話せずとも成立している関係に拘ってしまうことになるんですね。元彌くんも狂言の宗家の嫡男という本家筋なのはいいとして、自分自身の会話によって、自分自身で人間関係を広げていかないといけないでしょ?そのように自分自身で縁を広げていくことができないダメダメ家庭の人間は往々にして、家柄自慢をしがちです。しかし、いい家柄は出発点であって終着点ではないでしょ?

2.夫自慢・・・ダメダメ家庭の女性は、意外にも夫自慢をすることがあります。しかし、その夫自慢もどうもピントがはずれていたりするんですね。それこそ上記のような家柄自慢だったり、学歴自慢だったりするわけ。しかし、長年連れ添った夫についての自慢話が、夫の家柄だったり、学歴って、ヘンでしょ?

3.ジジババが威張っている・・・豊臣家はジジババが威張っている状態ではなかったようですが、和泉流宗家はジジというか・・・ババが威張っていますよね?ダメダメ家庭のジジババは自分の権威が通用する狭い領域を出てしまうと、能なしなので、狭い領域で威張っていることになるわけ。

4.権威主義・・・会話の能力がなく、自分自身の言葉で自分の意向を語ることができない人間は、既存の権威を利用し、その権威の威光によって自分自身を正当化するわけ。

5.子供だけが頼り・・・ダメダメ家庭の親は会話の能力がないので、自分の相手をしてくれるのは自分の子供だけになってしまう。そしていつまでも自分の相手をしてくれるように、子供を甘えん坊に育ててしまうんですね。

6.親離れできない子供・・・子離れできない親に育てられたので、子供だって親離れできない。精神的に自立できないばかりではなく、子供も会話の能力が身に付いていないので、親と同じように、一般社会では能なしなんですね。結果的に仲がいい親子になるわけ。しかし、いい歳をした人間がいつも親子一緒って・・・それこそが、協会から追放される根拠になりますよね?

7. 人の気持ちがわからない・・・豊臣恩顧の大名が何を考えているのか?あるいは和泉流のベテラン狂言師が何を考えているのか?その点がわかっているのなら、こんなことにはなりませんよね?まあ、そもそもそんなことを考えてもいないでしょが。

8. 味方がいない・・・人の気持ちがわからなく、会話ができないので味方がいなくなってしまうのは当然。結局は、先代の遺産を食い潰して生きていくしかないわけ。だから尚更のこと、先代の意向を強調することになってしまうわけです。

9. 現実回避・・・自分の住んでいる狭い世界から一歩も出ようとしない人に限って、「世界はこうなっているんだ!」などと説教したりするもの。本人はどう思おうと勝手ですが、そんな人に育てられる子供は気の毒でしょ?

10. 問題を認識しない・・・まさに存亡の事態になっても、「アイツの方が悪い!」と、逆に被害者意識になるばかり。

11. クレーマー・・・淀君も、和泉流宗家も色々と文句を言っている。しかし、それを聞いて思うのは「だったらアンタたちはどうしたいの?」ということ。しかし、着地点のないクレームを続けるのは、ダメダメ家庭のオハコ。

12. 常識を与えない・・・親自身が狭い世界でのみ生きているお山の大将なので、世間一般の常識を子供に伝えられないわけ。自分が威張っていられる狭い世界を出てしまうと、自分自身は能無しであることを何となくわかっているので、自分自身はそんな狭い世界にしがみつくことになる。だから親自身に常識がないし、子供にも伝えられないわけですね。

13. 意外に容姿端麗・・・和泉流宗家はともかく、淀君は美人ということになっています。まあ、淀君のご母堂のお市の方は美人の誉れ高い人ですしね。しかし、お市さんも夫の浅井長政が死んだあと、柴田勝家ではなく、秀吉とくっつけばよかったじゃないの?顔は柴田勝家の方が上かもしれないけど、能力は秀吉の方が上でしょ?一国の大名の妻だったのに、「人を見る目」がありませんよね?そのように能力より、容姿で人を選んでしまうので、後々面倒なことになってしまうんですね。それでは、当人自身はともかく子供にも悪影響でしょ?

和泉流宗家の節子さんの出身家庭は重症のダメダメ家庭でしょう。当人は勝手ですが、子供まで巻き込んじゃいましたね。

まあ、400年前から人間は全然進歩していない・・・まったく伝統というものには価値がある・・・さすが伝統芸能の伝承者だ!と思わざるを得ません。
折角だから、宗家の建物に立てこもって、篭城すれば、もっと伝統芸能なんですがネ。

(終了)
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発信後記

今回はちょっとテレビネタ。
たまには軽めのネタにしないとね。
次回から2回連続で、シビアーなネタが来ますし。
読んでいて「あちゃ〜」と、思ってしまう人もいると思います。

テレビというと、昨日の北九州の地震で、気象庁の課長さんが、またまた登場してきました。本来役人は黒子的な存在なので、目立ってはいけないし、マスコミ対応は部長より上の局長以上の立場の仕事。一介の課長が、昨年末以来大活躍なのは、本人も困っているでしょうね。

しかし、災害の避難って難しいなぁ・・・と、昨年の新潟の地震の報道で思いました。余震があって、幼稚園の園児が一カ所に集まる。それはそれでいいのですが、集まった園児の上の天井には、むき出しの蛍光灯が・・・
「オイオイ、アンタたち何やっているの!」と、テレビを見ていた私にめまいが・・・
まあ、人が集まるところは、せめて蛍光灯にカバーが必要でしょ?おまけに地震の避難なんだし・・・

しかし、いつも見ているものは新鮮な気持ちで見直すことは難しい。
これはどんなことでも、そうです。
前にも引用しましたが、ミシェル・フーコーが、『哲学は、見えているものを、見えるようにすること。』と言ったそうです。

『見えているものを、見えるようにすること。』って、家族の問題でも必要ですし、非常時の対応の時だって必要なことなんですね。
R.10/11/18