トップページに戻る 配信日分類の総目次に戻る
カテゴリー分類の総目次に戻る タイトル50音分類の総目次へ
カテゴリー 映像作品に描かれたダメダメ家庭
配信日 07年6月12日
取り上げた作品 苺ましまろ
さて、このメールマガジン「ダメダメ家庭の目次録」では、「作品に描かれたダメダメ家庭」というカテゴリーを設け、さまざまな芸術作品を取り上げながら、その中で描かれているダメダメ家庭の特徴を指摘したりしています。
別に、その作品のレビューをするつもりはありません。あくまでダメダメ家庭を考えるために有用な視点を提示する・・・そんなスタンスです。
たまに誤解なさっておられる方もいらっしゃるようですが、批評を目的とはしていないんです。

作品であれば、客観的に見て、議論することが可能でしょ?
家庭そのものは、それぞれの家庭の流儀があって、客観化が難しい。
だから、家庭の問題を議論するためには、この手の客観化された作品を題材にすることの方が、まずは適切なんですね。

ということで、今回は、日本のアニメである「苺ましまろ」を取り上げてみます。
最近はアニメを取り上げることが多くなってきていますが、特に深い意味があるわけではありません。ここで取り上げる作品の選定に当たって、「入手性」という点を、それなりに重視しているので、入手しやすいジャンルといえる日本のアニメを取り上げたわけです。
オペラにもダメダメ家庭を描いた作品は色々とありますが、購読者さんがご興味を持っても、ご自分で見てみるということは難しいでしょ?
アニメだったら、レンタルヴィデオショップにいけば、簡単にご自分で見てみることができますからね。

さて、今回取り上げるのは、「苺ましまろ」という作品。
どこのレンタルヴィデオショップにもおいてあるアニメ作品です。
小学6年生の女の子2人と、小学5年生の女の子2人の仲良し4人に加えて、その小学6年生のうちの一人の姉である短大生の合計5人を描いた、コメディです。
コメディだから、基本的には笑いながら楽しく見ることができる。

しかし、小学生の仲良し4人のうちの1人の行動が典型的にダメダメ家庭の子供の行動なんですね。作者も、そのことを、意識しながら作品を作っている。
と言っても、一般の人は、その典型的なダメダメ家庭の子供の姿を見ても、「ヘンな行動をするなぁ・・・」と笑うだけ。まあ、コメディなんだから、笑えばいいわけですが、ただ笑うだけでなく、ダメダメ家庭を考える視点としても、結構有用なんですね。

さて、では、4人のうちの1人に現われているダメダメ家庭の要素を、ここでピックアップしてみましょう。

1. 名前・・・4人の女の子の名前は、アナ・コッポラ(イギリス人という設定),桜木茉莉(まつり),伊藤千佳(ちか),松岡未羽(みう)、そして、千佳ちゃんの姉の短大生が伊藤伸恵(のぶえ)という名前です。まあ、アニメの登場人物の名前なんだから、現実離れした名前でもいいでしょう。しかし、短大生の名前が伸恵という、まあ、何の変哲もない保守本流の名前なんだから、逆に言うと「珍しい」名前が際立つわけ。この4人のうちで一番目立つのはやっぱりイギリス人のアナ・コッポラちゃんであることは当然。イギリス人と言っても、コッポラだからイタリア系のイギリス人なのかな?だったら、アナ(Anna)は珍しい名前ではない。むしろ伝統的な名前となります。Annaなんて名前はキリストのお祖母さんの名前なんだから、実に伝統的ですよ。

そのような昔からある伝統的な名前ではなく、「あれっ?ちょっと読めないなぁ・・・」という名前は、やっぱり「未羽」と書く「みう」ちゃんでしょ?この名前はちょっと読めないよねぇ・・・
それに「みう」って・・・
個人的になりますが、実は私は昔ある人に「ミウ」とあだ名をつけたことがあります。そうしたら、「ぴったりだ!」ということで、そのあだ名が浸透しちゃって・・・付けた側のこの私もビックリしました。なぜにミウなのかというと、ミュータントのように奇妙奇天烈だから・・・だから短くしてミウ・・・しかし、あだ名ならともかく、自分の子供の名前に「みゆ」はどうなのかな?おまけに漢字が読みにくい。いったい何を考えてこんな名前にしたんだろう?

2. ワタシに構って!・・・この「未羽」ちゃんは、それこそミュータントのように奇妙奇天烈な行動をする。しかし、その行動原理は意外なほどにわかりやすいわけ。それは「ワタシに構って!」というもの。とにもかくにも、「構って」ほしがる。構ってもらうために、色々な行動をして、周囲の人間が構わなければならない状況を作っていくわけ。それって、それだけ、自分の親から構われていないということなんですね。

3. ペットの問題・・・この「苺ましまろ」の舞台は、どうやら静岡県の浜松市あたりのようです。東京ではないので、皆さんマンションではなく、庭付きの一戸建ての家に住んでいる。だからマンションとは違ってペットも飼いやすい。では、どんなペットがいるの?イギリス人のアナちゃんは、ブランドものと思われる大型犬がいます。あと、茉莉ちゃんはフェレットがいる。あと、伊藤伸恵と千佳姉妹には、雑種の犬がいます。このあたりのペットの選定は名前の付け方と実にマッチングしているでしょ?では、未羽ちゃんの家には?

この未羽ちゃんの家には、ペットがいない。未羽ちゃんの家は、一戸建てなんだからペットを飼うのは問題ないはず。それに、未羽ちゃんは「ワタシに構って!」といつもトラブルを起こしている子なんだから、「自分が構ってあげて」そして、「自分が構ってもらえる」犬のようなペットがほしいのでは?どうしてペットを飼わないの?未羽ちゃんは、お隣の犬を嫌いなわけではない。別に犬嫌いではないわけ。だったら、犬くらい飼えばいいじゃないの?ペットの問題は、その家庭の心の余裕を表していることが多いもの。未羽ちゃんの家庭は、それだけ、精神的に余裕がない家庭なんですね。

4. 独占欲・・・「ワタシに構って!」と切望している未羽ちゃんは、お隣の伊藤伸恵さんに甘えている。しかし、普段、親から甘えさせてもらっていないので、その独占欲が強いわけ。他の女の子が、その伸恵さんに甘えている姿を見ると、ジャマをする。「自分だけが、伸恵お姉ちゃんに甘えていいんだ!」そんな感じ。逆に言うと、それだけ甘えるにも必死なんですね。

5. 加減を知らない・・・「ワタシに構って!」と何かとトラブルを起こす未羽ちゃんですが、そのトラブルの加減がメチャクチャ。ちょっとしたトラブルなら笑って済む話ですが、限度を超えてしまっているので笑うに笑えない。未羽ちゃんは加減を知らない子なんですね。つまり、その親が、自分の子供に対して加減を教えていないことがわかるわけ。かなり重症の放任家庭ということがわかるわけです。

6. 他力本願・・・この未羽ちゃんは、いつも学校の宿題を見せてもらおうとする。たまにはそんなこともいいでしょうが、いつもとなるとねぇ・・・この未羽ちゃんは宿題に限らず、いつも他力本願。まあ、できるだけラクをしたいのは当然として、じゃあ、未羽ちゃんの親は、子供のそんな姿をどう考えているの?どんな大人になってほしいの?子供の他力本願ぶりから、それだけ、親の放任がわかるわけです。

7. 早口・・・前にも書きましたが、この作品の舞台は静岡県の浜松あたり。浜松は、どっちかというと気候温暖な場所ですよね?気候温暖な場所の人は、往々にしてゆっくりしゃべる。浜松のような、ミカンが栽れる地方の人は、だいたいのところ、しゃべりがゆっくりなもの。それだけノンビリしているんでしょう。それはそれで結構なこと。この作品の登場人物のしゃべりも、実にゆっくり。しかし、仲良し4人の中で未羽ちゃんのしゃべりは、どっちかと言うと早い。それだけ、自分の意向を伝えるのに必死なことがわかるわけ。だから声もどっちかと言うと大きめなんですね。

8. 大人の言葉・・・この未羽ちゃんは、大人が使いそうな言葉をよく知っていたりする。子供同士の会話でも、そんな大人の言葉が出てきます。しかし、どこでそんな言葉を知ったの?それってたぶんテレビでしょ?つまりそんな番組ばかり見ていることがわかるわけ。そのことを親はどう考えているの?

9. ウケ狙いの言葉・・・この未羽ちゃんの言葉にはウケ狙いの言葉が多い。まあ、笑いを取ろうとしているんでしょう。冗談なり軽口をたたくことがダメダメであるわけではありませんが、いつもいつもそんな調子なんですね。それだけ、自己アピールに必死であることがわかるわけ。それだけ親から認められていないこともわかるわけです。

10. 服装・・・登場人物の服装の選択と、ペットの選択は似ています。アナちゃんはどっちかというとブランド物。茉莉ちゃんもブランド物。伊藤姉妹はノーブランドの服。この辺りは名前やペットの選定と共通しています。ではペットがいない未羽ちゃんは、どんな服?ペットがいないからといって、まさか裸というわけではない。この未羽ちゃんは、たまに機能性無視のチャラチャラした服を着ていることがあります。その他の子供は、ブランド物と言っても子供服の範疇の服装ですが、未羽ちゃんはまるで芸能人かと思わされる機能性無視の服の時があるんですね。いったい何を考えて、そんな服を選定したんだろう?

11. 学校の問題・・・これほど「わかりやすい」事例なのに、学校は何もアクションを起こさない。ただ「困った子だなぁ・・・」と見ているだけ。まあ、そんな学校だからドッカーンとなっちゃうわけです。


この未羽ちゃんの親はアニメには出てきませんが、その家庭は重症のダメダメ家庭であることがわかってきたでしょ?
小学6年生の時点では、お隣さんの短大生に甘えていられる状態。それに小学生なんだから、一緒に遊ぶことも容易。しかし、中学生になったら?いつも遊んでいる友人たちも、それぞれの生活が出てくる。それに甘えさせている伸恵さんにも、仕事とか色々とやらなければならないことがでてくるでしょ?もう甘えることもできませんよ。

まったく甘えられない状況になると、まさにドッカーンとなっちゃうわけ。

自己アピールに必死なところを生かせば、以前に取り上げたアナトール・フランスの小説「タイース」を考えた際に触れたように、芸能界に進むという道があるわけです。逆に言うと、そのような進路しかない子なんですね。
とてもじゃないけど、カタギの世界では生きてはいけない人間といえるでしょう。
まあ、たぶん、この作品の作者さんご自身にも、そんな面があるのでは?
皆さんは、この未羽ちゃんがどうなると思いますか?ちょっと考えてみてくださいな。

皆さんのご近所のトラブルメーカーの子供の姿って、この「苺ましまろ」での未羽ちゃんの姿に似たところがあるケースも多いと思います。やたら「ワタシに構って!」と人にからんだりするところなど。
一度ご覧になって、相似点などをチェックしてみてはどうでしょうか?

(終了)
***************************************************
発信後記

アニメ作品は入手性が容易ですから、ご自身でチェックしてみると、「なるほどねぇ。」と納得されると思います。
お子さんと一緒に、もう既に、このアニメをご覧になった方もいらっしゃるでしょうが・・・
そんな人は、「この人は、細かいところまで見ているなぁ・・・」と思うんでしょうねぇ。

私も、別に見ようとして、見えるわけではないんですが・・・
まあ、それくらいでないと、500本以上の文章を書くなんてできませんよ。

映画作品とか文章の作品も、取り上げたいところですが、あまりに「小難しい」作品だと、紹介しても敬遠されるでしょうし・・・

もし、「この作品からダメダメ家庭の問題を考えるに有効な考え方が得られる」という作品がありましたら、皆様も、一度投稿の文章を考えてみてはどうでしょうか?
直接自分の体験を文章にまとめるのは精神的に負担になるでしょうから、まずは、第3者の作品から、考えてみる・・・それも有効だと思うんですよ。
R.10/9/23