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カテゴリー 「入れ込み」「入れ込まれ」問題
配信日 04年4月2日 (11年1月15日 記述を追加)
タイトル 人に入れ込む
ダメダメ家庭出身者には相談相手がいません。
そもそもコミュニケーション能力が低いので通常のコミュニケーションにも問題が多い。
これは育った家庭が原因なので、いまさら如何ともしがたいわけです。

コミュニケーション能力が低いという理由ばかりではありません。「自分自身の最も身近な人間(つまり親)が最大の敵」という原体験を持っているわけですから、子供時代に気軽に相談したこともないわけです。これについては先週配信いたしました。
また周辺環境としても、実際に困ったこと人が相談できるシステムがないことも、先日に配信いたしております。

ダメダメ家庭出身者は、信頼できる相談相手を見つけることに大変に苦労する
ダメダメ家庭の子供が、ちょっとでも本音を言うと、「親のことをそんな風に言うものじゃないよ!」と怒られたり、「君の考えはひねくれている!」と言われたりするだけ。
ダメダメ家庭の現状を踏まえ、的確な指摘をしてくれるようなやり取りをしたことがない。
だから、自分の考えを理解してくれる人に出会うと、その人に入れ込んでしまうことも多く、その人から離れがたい思いを抱いてしまうことになる。
このようなことは、以前配信いたしましたドメスティック・ヴァイオレンスの問題で触れております。

「俺を理解してくれるのはオマエだけだ!」
「オマエを理解できるのは、オレだけだ!」
まあ、ドメスティック・ヴァイオレンスだけでなく、ストーカー問題に陥る発想の典型と言えます。ドメスティック・ヴァイオレンスもストーカーも、「離れる」ことが一番の解決法でしょ?しかし、それができない心理状態になってしまう。
そのような事態は、心理的には、「相手から依存される関係性に依存してしまう」共依存状態が深刻化していると見ることができるでしょう。
逆に言うと、それだけ、「入れ込む」側としては、自分のアイデンティティを自分単独では実感できない状態と言えます。そして、印象的な出会いによって、初めて自分のアイデンティティが実感できたと思ってしまったら、その実感を求めて、すがりつくことになってしまう。

ドメスティック・ヴァイオレンスやストーカーのような、事件に類するような事態に至る例もありますが、ダメダメ家庭の人間は、そのパターン以外にもやっぱり特定の人間に入れ込んでしまうことも多い。
バルザックの小説「谷間のゆり」においても、アンリエットというダメダメ家庭出身の伯爵夫人が言う「私と同じこと言う人と初めて出会ったわ!」などと言ったセリフもありました。
そうやって、自分の辛い境遇に対して理解がある青年のフェリックスに入れ込んでしまう。

お互いが理解し合える友人とめぐり合うことができれば素晴らしいこと。
しかし、ダメダメ家庭出身者では、ことは単純には行かない。

どうしても相手の自由意志を縛る傾向が出てきます。
まるでスッポンが食いついたような感じで相手にしがみつくわけです。
「やっとめぐり合ったワタシの理解者!」と思ってしまう。だから、「どうしても離したくない!」と思ってしまう。そして、自分の思い通りの言葉を、相手に言わせようとする。
まあ、行動はともかく、そんな発想自体は典型的なストーカーの発想と言えるでしょう。

あるいは、入れ込み対象を偶像化したりする。
しかし、その相手からちょっとでも自分の意に沿わない発言が出てきたりしたら、それこそ「自分の最大の敵」と認定されてしまうこともある。
「まあ、裏切られたわ!!」「私を騙していたのね!?」

自分の好きなアイドルタレントは「間違ったことが何一つない純真可憐な女性でないとダメ!」と妄想する思春期の男の子と同じ心情と言ってもいいでしょう。
ちょっとでも気に入らないことがあることが許せない状態となってしまう。
いわば、ダメダメ家庭出身者が持っている妄想癖と結びついて、最大の味方から最大の敵へトリップしてしまうわけです。
相手の存在を見ているというより、自分の妄想世界の出演者として見てしまっているようなもの。映画監督が出演者に注文をつけたくなっている状態に近い。

また、別の言い方をすることもできるでしょう。
もともとが「離れられない」という心理状況なので、「離れた方がいい」という要素を見ないようにしたり、あるいは、そんなネガティヴな要素を破壊しようとするわけです。
「離れなくてもいい」ように、「離れなくてはいけない」理由を破壊しようとするわけです。
自分の判断で離れるのではなく、相手の側の問題としてしまい、相手の問題点を攻撃することになる。自己逃避なので、あらゆる問題が他者の問題になってしまっている。
だから、相手を縛ろうとする。

しかし、何かと縛られてしまう相手の側としては、やっぱり不快に思うのは当然のこと。それなりの善意からやり取りをしたり、相談に乗っているのに・・・逆に、相手方から色々と注文をつけられて・・・
それこそちょっとでも相手に厳しいことを言ったりすると、逆上されてしまう。
「どうして、ワタシにそんなことを言うのよ!」「アナタはワタシの味方じゃなかったの?!」
・・・そうなんですが・・・味方だと思っているからこそ厳しいことも言ったりするわけで・・・

今までちゃんとした会話をしてこなかったダメダメ家庭出身者にしてみれば、生まれて初めてやり取りが成立した人に対して、過剰に期待してしまうのもいたし方がないわけですが、現実的には、離れられないと思うがゆえに、相手は逃げて行ってしまう。「来るものは拒まず、去る者は追わず。」だったら、逆に言うと、相手も逃げ出すことはありませんよ。
縛られるから逃げ出すわけです。結局は、やり取りの相手に逃げられて、ますます相談相手がいなくなってしまう。

ますます相談相手がいなくなったダメダメ家庭出身者はどうなるのでしょうか?
結局は、自分の子供しか話し相手がいなくなってしまうことになる。
しかし、子供に入れ込んでも、結局は同じことの繰り返しになるのは、誰でも分かること。
しかし、親の支配下にある子供としては、表だって反論せずに親に合わせてくれる。
だからこそ、問題が潜在化してしまったり、あるいは、今度は、その子供の側が親譲りの入れ込み行動を起こしてしまうことになってしまう。
自分のアイデンティティが実感できないので、どうしても別の誰かに自分のアイデンティティを求めてしまうわけです。

逆に言えば、自分のアイデンティティが実感できない人は、「今のところ」は、入れ込んでいなくても、印象的な出会いがあれば、そのまま突っ走ってしまう可能性が大きいと言えます。
このようなことは、個人レヴェルだけでなく、国家のような集団においても、発現するもの。その集団のアイデンティティが実感できなければ、何かのきっかけで暴走してしまうものなんですね。

そういえば、2002年のサッカーのワールドカップの韓国チームの監督をされたオランダ人のヒディングさんは、韓国の国民に付きまとわれて閉口していらっしゃるようです。
韓国の人にしてみれば、「ヒディングこそわれらの理解者!」と偶像化しちゃったわけです。しかし、ヒディングさん本人にしてみれば当然に恐怖ですよ。
そんなことは、ちょっとでも考えればわかる話ですよ。

そのような「人に入れ込む」発想は、普段から「自分は理解されていない。」と思っていることから来ているわけです。周囲の人とのやり取りがうまくいかないダメダメ家庭出身者には、ありがちなことと言えます。逆に言うと、入れ込みが起こったという事は、入れ込んだ人が、心の空虚感や周囲との疎外感を抱いていたということが、その前提としてあるわけです。
形の上では周囲の人と「問題なく」やり取りができていても、その内面では満たされないものがあったわけです。

別のところで書いていますが、「入れ込み」とは、相手を肯定したものではなく、自分自身を相手に投影して、その投影された自分自身を肯定しようとしている状態と言えます。
いわば、いびつなスタイルの自己愛なんですね。
だから、相手の存在は投影された自分を映すスクリーンに過ぎないんですね。
入れ込みというのは、相手の人格を肯定しているのではない。その相手だと自分のイメージを投影しやすいというだけ。
だからこそ、「思い通りのイメージで映さない」と、逆に攻撃されてしまう。
しかし、そんなきれいに映るスクリーンに過ぎないにせよ、まさに初めてきれいに映ったとしたら、「このワタシのことを分かってくれる人だ!」と大歓喜されてしまう。

入れ込みとは相手への強い結び付のように見えたりするものですが、現実的には相手は見えていないわけです。あくまでスクリーンとして都合がいいというだけ。結局は、独り言が大規模になったようなものなんですね。まさに、妄想が具現化しただけと言えるでしょう。妄想が具現化されたものにすぎないからこそ、その具現化された偶像は、入れ込む側が不満を持ってしまったら、破壊されることになってしまう。
結局は、相手の存在を肯定していないままの結びつきであり、その入れ込み先に投影している自分のイメージも、周囲からの疎外されている自分という否定的なイメージとなっている。
つまり、一方通行の「傷の舐めあい」とみると、この入れ込み現象も理解しやすいのでは?

(終了)
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発信後記

ということで・・・日頃からこのメールマガジンの内容に御賛同いただいている方も・・・私個人には入れ込まないでくださいね。

あと・・・家庭問題についての相談窓口(特に地方自治体のもの)が機能していないことは月曜日に配信いたしました。
まあ、自分の娘の困りごとも聞けないような人間が作ったシステムなんて、期待する方がバカですよね?
R.11/1/15