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カテゴリー 映像作品に描かれたダメダメ家庭
配信日 06年12月29日
タイトル ひぐらしのなく頃に(日本のアニメです)
メールマガジンを発行しているので、購読者の方よりお便りを頂戴することもあります。たびたび触れております逆上メールもありますし、「参考になった・・」とかのシンプルな感想のメールもあります。あるいは相談のメールもあります。

何回も書いていますが、受け取って、こちらが「使える」のは、逆上メールです。これはネタになる。なんと言っても、ダメダメ家庭における会話の不全という特質を、これ以上ないくらいに体現しているわけですしね。

さて、購読者さんからのメールの中で面白い表現があったことがあります。
それはこのような記述です。
「アンタ・・・よくわかっているねぇ・・・」
このメールマガジンでの記述が、ダメダメ家庭の特質をよく捉えていて、書いている私が、それをよくわかっている・・・そんなお褒めの言葉なんでしょうネ。
その感想を送っていただいた方は、まだ購読していらっしゃるかな?

しかし、これはヘンだ!私は、その言葉を読んで苦笑いしてしまいました。
そもそも、「よくわかっている」からこそ、メールマガジンの文章にしているわけでしょ?これはダメダメ家庭に関したメールマガジンに限らず、わざわざ文章を制作するのは、書き手が「よくわかっている」からこそですよ。それは映画についてのメールマガジンでも、政治についてのメールマガジンでも、ギャンブルについてのメールマガジンでも同じ。書き手が読み手より、よくわかっている・・・そんなことは当然のこと。

それこそ大学の講義で、講義を受けた学生が教授に対し、このように言うようなもの。
「教授!先生はこの分野をよくわかっていますねぇ・・・」
そんなことを学生が言ったら、教授からどのような返事が返ってくるでしょうか?
決まっていますよね?
「オレがよくわかっている・・って・・・オマエは、いったい誰に向かって言っているんだ?ナマ言っているんじゃねぇ!」

学生の側が、先生の教授に「よくわかっているねぇ・・・」も何もないでしょ?それってヘンですよね?
それと同じように、このメールマガジンに対する感想で、「よくわかっているねぇ・・・」という感想は、やっぱりヘンなんですね。むしろ、「オマエは全然わかっていない!」と書く方が自然ですよ。「わかってもいないのに、何をトンチンカンなことを書いていやがるんだ!」
まあ、このケースの発展型が逆上メールなんでしょう。逆上メールの方が、ある意味において自然であって、「アンタ・・・よくわかっているねぇ・・・」というお褒めのメールの方が不自然なんです。そうでしょ?

しかし、この「よくわかっているねぇ・・・」感想は、ヘンではあるけど、ヘンではない。一般的にはヘンですが、ダメダメ家庭に関する文章の領域においては成立する感想なんですね。

だって、ダメダメ家庭に関する文章は、「よくわかっていない」人が書いているケースが実に多いわけ。
しかし、「よくわかっていない」人が、どうしてわざわざ文章を書いたりするの?

そもそも、ダメダメ家庭の人間は自分自身から目を逸らしている人が多い。自分の目の前にある重要なことから逃避して、どうでもいいことをウダウダと書く例が実に多いわけ。
それに、ダメダメ家庭の人間が、唯一言いたいことは「ワタシは悪くない!」ただそれだけ。そんな人が文章を書いても自己弁護に終始するだけ。

これでは「よくわかっている」文章なんて書きようがないでしょ?

おまけに、ダメダメ家庭は会話不全の家庭。だから表現力が低いことが多い。自分の言いたいことをわかりやすく・・・なんてことは出来ない。そんな人の書いた文章なので、「この人・・・いったい何が言いたいの?」なんてことになってしまうのも当然。

それに、ダメダメ家庭の文章を、メールマガジンなどにして配信するのは、別の問題があります。
それなりに、自分自身の問題についてわかっていて、それなりに文章力があったとしても、それを皆が読めるような状態にすると、やっぱり来るのが逆上メール。あと最近はブログの炎上なんてこともあるようですね?

そのような事態を事前に予想して、文章化するのを止めてしまったり、いったん公開してもスグに引っ込めてしまう・・・だから、ダメダメ家庭の現実を厳しく指摘した文章は、あまり存在しないわけ。

そんな間隙をついて、ダメダメ家庭の現実を知らない人による問答無用の説教調の文章があふれてしまう。
それこそ「子供を愛さない親はいない。」などの一般論を連呼するだけになったりする。
あるいは、自分自身の問題から目を逸らした自己弁護調の文章もあったりするでしょ?
だからこそ、そんな文章を読むと「みんな・・・現実をわかっていないなぁ・・・」なんて感想を持つことになる。

私の文章に対して、「よくわかっているねぇ・・・」という感想を持つのはいいのですが、ではどうして、そのような感想を持つのか?そのことからダメダメ家庭に関することなり、ダメダメ家庭を表現することについての問題が見えてくるわけです。

さて、「アンタ・・・よくわかっているじゃん!」とお褒めの言葉を頂戴した私ですが、この私自身が、別の人の作品に接して「アレっ?この人・・・よくわかっているじゃないの?」なんて感想を持つことも、もちろん、あります。
バルザックやカルデロンのような超巨匠だけでなく、もっと接しやすい作品でも、そんなことがあったりするわけ。

ということで、今回は日本のアニメを取り上げてみましょう。
どこのレンタルヴィデオショップにも置いてあるようですから、休みもありますから皆さんもご覧になってくださいな。
それは「ひぐらしのなく頃に」という作品。なんでも同人作品をアニメ化した・・・らしいのですが、私はアニメ云々に詳しい方ではありませんので、故事来歴はご自身でお調べくださいな。

「怖い!」アニメということで、惨殺事件が扱われているらしい・・・

確かに惨殺事件が出てくるので、その面では「怖い」わけですが、私のような人間が見ると、笑ってしまう。
別に作品がヘンテコという意味ではありませんヨ。
と言うより、この「ひぐらしのなく頃に」における登場人物の心理が、ダメダメ家庭に典型的な心理なんですね。

1人の男の子と、4人の女の子が中心となって進行する作品ですが、そのいずれの登場人物の心理も、この私のメールマガジンの内容を理解していると、「ああ!このような行動や物言いは、メールマガジンにあの箇所に書いてあったなぁ・・・」と思っていただけると思います。

現在(06年)では、5巻までレンタルできる状態ですが、まだ続いているようです。

具体的な詳細については、ご自身でご覧になればいい話ですので、いかにもダメダメ家庭的な行動なり物言いを簡単に列挙してみましょう。

1. 入れ込み、入れ込まれ・・・「この人のことはワタシが一番理解している!」なんて心理は、このアニメで頻繁に出てきます。

2. 独占欲・・・入れ込んでいるから、独占欲が強い。嫉妬心も強くなる。

3. ストーカー・・・入れ込んでいるので、ストーキングする。

4. 過剰な謝罪・・・「ごめんなさい!」なんて謝罪の言葉が実に多い。

5. 地縁,血縁・・・村の地縁や血縁が重視される社会。それだけ会話ができない人たちであるわけ。

6. 被害者意識の共有・・・舞台となっている村は、どうも被害者意識で結びついている状態。だから集団ヒステリー状態に陥りやすい。

7. 閉鎖性・・・ダメダメ集団は「出て行く」人間を許さず、「入って来る」人間には寛容なもの。

8. オカルト趣味・・・「御社さまの祟り」なんてオカルトチックな言葉が出てくる。

9. かわい子ぶりっこ・・・甘える体験が希薄なので、自然な子供らしさではなく「作ったかわいさ」をアピールするようになるわけ。

10. 敵vs味方・・・敵vs味方と単純な二項対立で考えるのも、ダメダメのお約束。

11. 態度の豹変・・・人物を「敵」か「味方」かの単純な二項対立でしか見られないので、態度が激変することもあるわけ。おまけに、ダメダメ家庭の人間は実際の会話と妄想が並行して走っているので、突然に妄想モードにシフトしたりする。だから、態度が豹変することも多い。

12. 先に「怖い」と言う・・・人を怖がらせる側の人間が、先に「ワタシ、怖いわ!」なんて言い出して、聞かされた方は途方に暮れるばかり。

13. 自分の被害だけを考える・・・ダメダメ家庭の人間は被害者意識が強く、自分こそが一番の被害者だと確信しているので、自分の被害だけを考え、相手がどれだけ困っているのか全然考えない。

14. 会話を終止する物言い・・・都合が悪くなると、会話を止めるような物言いをする。あるいは、大笑いすることで、都合が悪いやり取りを終わらせようとする

15. 逆上・・・もっと都合が悪くなると逆上モード。

16. ヘンな名前・・・「魅音(みおん)」とか、やっぱり「な」が付く「レナ」とか・・・まあ、これはアニメなんだから、しょうがないけど、逆に、沙都子(さとこ)や梨花(りか)などの比較的オーソドックスな名前も登場してきます。それだけヘンな名前が際立つわけ。

17. 児童虐待・・・エピソードとして、そんな「いかにも」なエピソードも出てきます。この場面でも、虐待されている側が「ごめんなさい」と言うわけ。もはや、お約束ですね。

その他もろもろダメダメ家庭の要素がテンコ盛り。

上記に列挙した項目の多くは以前にこのメールマガジンで配信しております。
バックナンバーのサイトにアップする際にはリンクを貼る予定です。

予告編で、「アナタは信じられますか?」なんて言葉が言われていますが、ダメダメ家庭の人間の発想の基本が理解できていると、それほど奇妙なことではないわけ。
むしろ、あまりに典型的なので笑ってしまうほど。
御社様(おやしろさま)の祟りなんていわれていますが、この「おやしろ」はダメダメな親のメタファーなのかな?

ちなみに「人に入れ込んだ挙句、惨殺」なんてことは、それこそ長崎県の小学校の事件とまったく同じ構図と言えるでしょう。現実で頻繁に見られることでもあるんですね。

むしろ面白いのは、「よく、ちゃんと表現したなぁ・・・」ということ。
ダメダメ家庭を扱った「作品」においては、作者が往々にして自分自身から「逃げて」しまうので、「どうでもいいことをウダウダ・・・・」というケースが多い。このことは前に書きました。しかし、この「ひぐらしのなく頃に」では、書き手が自分自身の問題を真摯に見つめていることがよくわかる。
まさに「よくわかっているじゃん!」と思ってしまう作品と言えます。

そして、「よくわかっている」ということだけでなく、私のような人間が思うのは「この作者さん・・・修羅場をくぐっているねぇ・・・」ということ。
残念ながら、想像力だけで、あるいは「外からの観察眼」だけで、こんなにもツボを押さえた典型的な修羅場を描くことなんて出来ませんよ。それはバルザックやカルデロンのような巨匠だって同じ。このアニメの作者さんも、実際に人から入れ込まれて死ぬ一歩寸前まで行ったんでしょうねぇ・・・

まあ、特に、文章を書けるような人は、感性も鋭いし、洞察力もあるので、「あの人がワタシの一番の理解者!」という『栄誉』を受けやすいんですよねぇ。
購読者の中にも、修羅場をくぐった経験がある方もいらっしゃるかもしれませんが、そのような方は、この「ひぐらしのなく頃に」を見てみると、「ああ!ワタシもあの頃・・・こんな状況だったなぁ・・・」と苦笑いしたりするかも?

実際にご覧になって、トンデモない情況を描いているように見える方もいらっしゃるでしょうが、ダメダメ家庭の現実というものは、まさにこんなものなんですね。
周囲にダメダメ家庭があって、その周囲の家庭について考えるために、このメールマガジンをご購読されておられる方もいらっしゃるでしょう。
そんな方も、一度ご覧になってみると、参考になると思います。
これくらい、ダメダメ家庭というものは、マトモな家庭の発想とは差があるわけです。


ちなみに、「じゃあ、アンタもそんなストーリーを書いてみたら?」と思われる購読者さんもいらっしゃるかもしれませんが・・・
私も書けないことはないでしょうが、同じものを見ていても、それをどのように表現するのか?という点においては、人それぞれの面もあったりします。
私の場合は、短い文章(メールマガジンにしては長いけど)で、引用を含めた形で、切れ込みを鋭く・・・と言った文章スタイルです。まあ、いわば「枕草子」型なんですね。それとは別方向の「源氏物語」型は、それの得意の人がやればいい話ですよ。

しかし、表現スタイルの違いはあっても、「同じもの」を見ている場合は、お互いがよく理解できたりするもの。以前に「ピアニスト」という映画を取り上げました。メールマガジンとして取り上げた際には原作者イェリネクさんのノーベル文学賞の受賞記念という面もありました。その折は原作ではなく、映画を見て文章にまとめたわけですが、現在、その原作を読んでいるところです。
読んで、これまた、ちょっと笑ってしまう。

なんとも、まあ!私のメールマガジンで書いてあることと重複している。
読みながら、「えーと・・この記述は、メールマガジンのあそこで書いてたなぁ・・・ああ、この点に関することは、まだドラフトの段階だ!これを取り入れてまとめようかな?」なんて調子。

このメールマガジンの記述を「かなり」理解していると、家庭問題を扱った現代文学を理解するのにも、大変に役に立つ。このことは自信を持って言えます。
逆に言うと、現代文学を理解できるくらいの理解力がないと、このメールマガジンの記述は理解できない・・・そんな面もあるのかな?と思っています。
たまに、「このメールマガジンの文章が中々理解できない自分が情けない!」なんて感想もいただくこともありますが、無理に理解しなくてもいいんですよ。
なんとなく覚えていただいて、時々に、必要に応じてチェックするくらいでいいと思っています。だって『目次録』なんですからね。

今回取り上げたアニメ作品も、見てみると、このメールマガジンの記述の多くを思い出す人もいらっしゃるでしょう。事前にチェックリストを作って、チェックしながら見てみるなんて見方もできるのでは?

(終了)
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【御挨拶】
当然のこととして、本年は今回が最後の配信です。
御購読ありがとうございました。
このメールマガジンは休みなしで突っ走っていますので、次回配信は来年の1月2日(火曜日)です。休みを取りたいのは山々なんですが、そんなことをしていると、いつまで経っても終了しないし・・・

では、皆さん!よいお年を!!
R.10/12/5